初めての事業。知った茶の文化の現状
――日本茶抹茶サロンを始めたのは光代さんのご実家にルーツがあると伺いました。
はい、元々私の実家がお茶を販売しているお店だったんですけれども、お店をやっていた母が亡くなってしまって。
それまでは国内とか、日本文化のことはもちろん、知識として蓄えていたけれども、日本茶そのものについて、私はあまり詳しく掘り下げてこなかったんです。
それから改めてお茶について知ろうとした時に、元々日本にあるお茶の文化を、日本の人が素通りしてしまっているという現状を知って、それがショックで。さらに色々調べていくうちに、学んでいくうちに、お茶農家さんがどんどん辞めていってしまって。
それはやっぱりお茶を飲む方達の高齢化もあると思うんですけれども、お茶を飲んだときの爽やかさ、鼻に抜けるような山の香りとか、ちょっと渋みが出てきた、みたいなことが、お茶の葉一つで違う味わいを楽しめる、その豊かな時間と心を誰もが知ってもいいんじゃないかなって思いが募ってしまって、何かやってしまおうって思ったんです。
――すごい行動力ですね。お客様は順調に増えていますか?
まだこれからかなって思います。でもお茶自体が本当に好きで、こんなにいろんな産地とかいろんな味わいがあるんだっていうのを楽しみにお買い物に来る方もいらっしゃるので、微力ながらファン層は増えているかなとは思っています。
――どんなお茶を取り扱っているんですか?
とにかく自分が飲んでおいしかったお茶の問屋さんを調べて、自分で直接交渉したり、たまたまご縁があってお話をいただいた方と深く関わりながら、こういうお茶をこういう形でこういう年代の人に取り入れていってほしいっていうことを説明して、お茶屋さんの方から推薦していただいたお茶を30種ぐらい、全部試飲しておいしかったものをピックアップして、まあ10種類ぐらいは並べているっていう感じです。
もちろん一つの産地だけじゃなくて、静岡、鹿児島、福岡と埼玉県の狭山などを扱っています。
――お客様によって、合うお茶を提案されたりとか…?
提案とあと、本当は30代の方がお茶の魅力を知ると、その方が結婚して生まれたお子さんがお茶を飲んだり、その方がお父様とかお母様にお茶を教えて差し上げたりする機会が増えると思っているので、私は30代の方が知っていただくと、もっと深く日本文化が根付くかなという思いで始めたんですけど、今は一人になった男性の方が楽しみに来てくださって増えているのが現状かなって思ってます。
――それは光代さんの明るさだとか、楽しい感じの魅力が活きているのだと思いますよ。あとは、このサロンの居心地の良さとか。
そう感じていただけたらいいですね。
意外と、元々お茶って男性の文化だったから、男性が自分用にゆっくりお茶を楽しんでいただいてもいいと思います。
――私は20代ぐらいの時に初めて鉄観音茶を飲んだんですけど、すごくいいお茶だなという印象があって未だに覚えていて。お茶を味わう体験ってすごく大事ですよね。
だって鉄観音茶は4000年も前に生まれたもので、そこに歴史と大地が全部詰め込まれてるような深みがあるお茶ですから。中国茶のようないいお茶はとっても深みがあるから、私も初めて飲んだときはびっくりしたんです。
お茶が育んでくれるもの
――お茶を飲み続けるメリットって何ですか?
体を良くするのはお薬の役割ですけど、お茶の中にも、もともと良薬と違わない成分があるので、健康に良いというのがもちろんあります。食物繊維も入ってるし、カフェインもあるけれども、カテキンって言って「菌に勝て!」みたいなパワーもあるから、免疫力も上がるんです。でも、私はそういう成分より、何よりも、飲んだときにほっとする心の安らぎ?がお茶のいいところかなって思います。心と脳って繋がってるから、気持ちが上がるっていうだけで体にパワーがみなぎるし、ゆっくり眠れるし。しっかり活動できるっていうことが全ての根底に繋がってくると思うんです。おいしいだけではなく、やっぱり「育みがある1杯を飲む」っていうことが気持ちの安らぎと気持ちのアップ、両方に繋がると思っています。
――光代さんは日本茶を通じていろいろな人と知り合ったとか、日本文化の良さをいろんな人に再確認してほしいっておっしゃっていたと思うんですけれども、そうやって日本茶を伝えていくことは自分自身で楽しいですか?
うん、楽しいし、自分が優しくなれる。お茶を通じると、なんか気持ちが和らぐのか、人と対しているときに優しい気持ちが育まれるのが半年やっていて分かりましたし、周囲にも以前とは変わったね、と言われますね。
――元々お優しい性格ですよね?
そうですか?(笑)
――これまでの人生で色々あったとお聞きして、ちょっとミステリアスな部分を感じましたけど、でも本当に今光代さんの周りにいる方たちにとって、光代さんのほっとできる雰囲気だったり、笑顔だったりがすごく癒しになっている感じがしますよ。
ありがとうございます。でも、それはお茶が本当に私の生活の中に浸透しているからだと思ってるんですよ。気持ちを安らかにさせるのがお茶の力だと思っているので。そこに私自身がサロンをやってることが加わって、そう一緒に映って見えるんだろうなと思うので、ほんとにありがたいことだと。やって良かったなって思っているんですよね。
――女性も男性も顔に人生観が出てくるじゃないですか。だから光代さんのその笑顔は偽れない部分だと思うんですよね。
そうですね。お茶のおかげで心からほっとしている感じが伝わるのかもしれないですね。
生活に安心を届けることが、事業の目指す場所
――光代さんが「達成した」って思えるようなゴールって何ですか?
私サブスクを始めたいと思ってるんです。皆さんにとってお茶を飲む時間が特別なものになるように、毎月お茶を定期的に届けるっていうことをしていきたいので。それで、「お茶があって良かった」って思う人がたくさん増えていったらいいなってイメージしています。
今はまだサロンからの発信だけなんですけれども、サロンで飲むだけじゃなくて、その方がおうちに帰ったあとも、生活の中にちゃんとお茶が浸透するように手渡しをしていくっていうのがゴールといえばゴールかなって思っています。
――サブスクの利用者数が何人ぐらいいればゴールになりますか?
どうしましょう…!考えてないけど、一応、3700人!
――なぜ3700人なんですか?
3と7っていう数字がすごく良い数字って教えていただいているので、あの、いい数字だったら届けた方にも良いことが起こると思っているので、なんとなく語呂合わせでそう思いました。
――じゃあ、ファーストステップは37人。次が370人。そこから3700人に行くようなイメージでしょうか。
ええ。それから、私の人生のテーマは、「また会いたい人になる」なんですね。それがこのサロンではもう叶い始めているなって思っています。もう一つは「安心をお届けすること」。何においても、ものの始まりとか、ものの起こり方がちゃんと分かっていると、その方が安心して手に入れて、安心して生活に取り入れることができるって思うんです。
お茶の歴史や由来、種類などもきちんと伝えることができるサブスクは、まさにお茶の全てを届けられると思っているので、サブスクを通して色々な人の生活の一部にお茶という安心が入ったらいいなって思っています。
進化し続ける内田光代の人生観
――サロンに来られる方たちとどんな関係性でありたいですか?
みんながこのサロンへ来て…色々あると思うんですよ。そんな中でも一緒にお茶飲んで一言喋ってほっとできるっていう位置にいたいなとは思っています。
ありがたいと思うのが、皆さんが置土産にひとことふたこと、アドバイスをして帰ってくださるんですよ。私と話して感じたこととか、ここへ来て感じたこととか、その方が培ってきた経験から思うこのサロンのあり方とかを、私が質問しなくてもさりげなく言って、ヒントを出して帰ってくださるから、それを拾い集めて新しいことを始めることができてるので、本当に感謝しかないなって思っています。
――言い換えれば光代さんが聞く耳を持っている人だということだと思います。人の意見をきちんと拾えるっていうのはすごいスキルだと思うので。しかもそれに感謝できるってことであれば、さらにどんどん成長できるというか。
ええ。トライアンドエラーってよく言うかと思うんですけど、その繰り返しかなって思いますね。やってみないと分からないことだらけなので、数々の失敗を私は失敗と思わないで経験って思えるタイプなので、頂いたアドバイスをやってみようって思うんです。皆さんいいアドバイスしかなさらないんですよ。余計なことをおっしゃらないから、やっぱり大人の世界だなって本当に思うので。
――光代さんも大人ですよね?(笑)
え、大人じゃないけど(笑)。
――光代さんは感受性も豊かだし、サロンを始めていろいろ感じていられているんじゃないですか?
ちょっと豊か過ぎるところもあるので、見なくても良いところは見ない力をつけていこうとしています。自分がこれまでに事業をやったことがなくて、いきなりこのサロンを始めたから、不安と頑張りたいっていう気持ちは本当に背中合わせなんですよ。なんか、ちょっとした歪みでひゅるひゅる~ってしぼんでしまいそうなところを、「ま、いっか」って思う力をお茶から頂いてるっていう感じなので。
――それってすごいいい言葉ですよね。ポジティブになれます。
私、台所に貼ってあるんですよ。「1日1回 ま、いっか」って。それを見ながらお湯を沸かしたりしてます。
――10年後、光代さんがどういう風になっていたいとかってありますか?前に、子供に迷惑がかからないようにって仰っていましたよね。
そうですそうです。心と体が健康でいるっていうのが今すごく難しい時代なんだって本当に思っているので、なおさら気を付けたいですね。私は子供が、離れて住んでいる男の子が二人いるんですけども、子供たちには「お母さんは元気でいるから大丈夫だよ」って伝えて、大切な時だけ会えればいい距離感でいたいと考えていたんですね。
今後、60代になるっていっても、私は50歳からが人生スタートだと思っているので、60代のアラカン(アラウンド還暦)過ぎても人生って楽しく生きていけるんだよっていうことを見せていける内田光代でいたいかなって思っています。